なぜ世の中に似顔絵があるのだろう?肖像画と似顔絵の境界は何か?

ということを時々考えます。

ウィキペディアでの似顔絵の定義

写楽

東洲斎写楽による浮世絵:市川鰕蔵の似顔絵

浮世絵の役者絵のうち、役者の個性をとらえて描いたものが特に「似顔絵」と呼ばれるようになった。

とあります。英語では似顔絵=portrait=つまり肖像画です。

なので似顔絵=肖像画であるのが広義の規定なんです。が、「似顔絵」という単語言葉は日本独自のものであると推察できます。浮世絵がルーツなんですね。

人類の肖像画の歴史は古く、石器時代の土偶や壁画にもその片鱗があるでしょう。

木村奏司さんの「肖像画入門」の本にあります。西洋美術史の肖像画の起源は古代ギリシャです。

写実性よりもその人物にふさわしい「観念」に基づいたものだったことがうかがえます。つまり、理想主義に基づいた肖像だったのです。

ちょっとびっくりですね。似てないものが肖像画だったのです。心の中にあるこうであったらいいな、こんな風に描かれたいな、という理想像が描かれているのです。政治的な意図もありました。

似ている=写実性を帯びてくるのはもう少し時代を経なくてはいけません。

やがて肖像画は宗教芸術とも密接にかかわりルネサンス時代を迎えます。実は風景画や花や果物などの静物画は近代のものであり、肖像画こそが絵画のルーツであるといえます。

ルーヴル美術館展新聞記事

今でこそ、イオンや観光地などで職業似顔絵師が存在し、新しい娯楽領域である印象が強いです。

が、美術史、では絵画では肖像画、つまり似顔絵が一番根源的なジャンルです。人の顔を絵にする、というのは一番原始的で生理的欲求に基づいたものです。

お子様がおられる方は、それを実感されているのではないか。小さな子供が絵を描いていると稚拙ながら人の眼や鼻口らしきものを誰に教えられるでもなく描き始めます。人は脳の仕組みとして、他者とのコミュニケーション、目鼻や表情を捉えて絵にするのが本能そのものなのです。

車の正面のデザインがわざと人間の顔を想起させるようにしていること(危険であると注意させるため)何気ない壁の柄が人の顔に見えてしまい幽霊かと思ってしまうことなど、

もっとも古く根源的な絵画が肖像、似顔絵だともいえます。

だからこそ、こうもスマートフォンなどでカメラが発達して写真が撮影できる時代になったのに、人々は絵画や記念品に「似顔絵」や「肖像」「美人画」を求めるのです。

現在2018年開催されている

ルーヴル美術館展 肖像芸術——人は人をどう表現してきたか

でそのナゾに迫ることができそうです。

東京国立新美術館で9月まで(以降は大阪市立美術館で開催されます。)

6月6日の日本経済新聞の紹介記事▼

ルーヴル美術館展新聞記事

幅広い時代とジャンルを網羅する同館の所蔵品から古代メソポタミアから19世紀ヨーロッパの作品を厳選し、人間はなぜ人の似姿を残すのかという普遍的な問いを投げかける

人の顔を描くのを好きなあなた、描かれるのが好きなあなたも展覧会に行かれてはいかがでしょう。

連綿と続く人の顔を描く芸術 肖像画からコミック・似顔絵までの流れのダイナミズムを感じられそうです。

ルーヴル美術館展 肖像芸術 ―人は人をどう表現してきたか