京都ですごい浮世絵展をやってるよ!

「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展

が京都市の相国寺承天閣美術館で開催されます。2018年7月3日(火)から9月30日(日)まで。

サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展

以前、似顔絵=肖像画であるが、そのニュアンスの違いを考えていて、日本の似顔絵の源流は浮世絵それも役者絵であると記事にしました。

私達はうっすらと肖像画と似顔絵の違いというものを感覚ではわかっています。

それを言語化、文脈化するのは難しいでしょう。英語で訳すとどちらも”portrait”だからです。人の顔を絵にすることには非常に大きな幅があり、美術史的にも多岐に渡るからです。

カリカチュア似顔絵とは何か

近年はやっているカリカチュア=諷刺人物画

という潮流にその答えがあります。

冗談ないしは嘲笑を目的としてその人物のもつ欠点を故意に強調し、容貌の諸要素がすべて変形されているにもかかわらず、全体としてはその肖像がまさにモデルそのものであるように描かれた肖像画

カリカチュア

つまり似顔絵=肖像画=肖像画の中でも諷刺やジョークを伴う誇張です。

人種マニア―有名人のエスニックルーツをカリカチュアで大紹介!

源流は16世紀のイタリヤとも、古代ギリシアであるとも。

肖像画の際たるものは、ルネサンス以後の貴族が画家に発注した(ダヴィンチやレンブラントなど)を想像します。こういうのね▼

ルクレツィア・ボルジア

これらは貴族が芸術家のパトロンとなり、自分たちをとてもキレイにステキに描かせる、つまり対象者の理想を具現化するものですよね。

パトロンである貴族、注文主がナルシシズムを満足させて喜んでお金を画家に払うことで画家の生活は成り立つので、そりゃ美化してステキに描きます。

カリカチュアは大衆のワルクチが源流

一方、カリカチュアは、より大衆的な民衆的なもの。つまりは、気晴らし、娯楽です。娯楽は下品なものです。有名人や政治家、為政者たちをからかい、悪意を持って笑いものにする、というブラックジョークから生まれるものです。

新聞でもいまだに政治家のカリカチュアを見ることができますよね。

ガラガラポン!日本政治 太郎と一郎、国盗合戦! (ガラガラポン!日本政治)

そこには「メディア」の発展が大きく関わります。脱線するとメディア論になるので、ここらで止めますが

美術や絵画は貴族や王様や教会建築だけの特権的なものだった。

しかし、印刷技術が発達して(メディアが変化した)新聞やチラシになることで絵が民衆のものになる。

つまり新しい娯楽、気晴らしになった。人間の根源的な娯楽は他人のワルクチです。要するにカリカチュアで思う存分悪口を愉しんだ。だから欠点が誇張され、ブラックジョーク、為政者や王様を影で笑いものにするための漫画なんです。

(私もやらかした覚えがあります。バイト先で、嫌われている意地悪な上司の顔を誇張して休憩時間中に描いたら、おお受けしてしまい会社中にコピーされて出回り、いつしか本人の眼に入り、それがきっかけでクビになったような記憶が…黒歴史ですね。すいませんでした)

カリカチュアの歴史―文学と美術に現れたユーモアとグロテスク

だからいかにも肖像画芸術!の方が格上のように思われがちですがどっこい、カリカチュアには、ものすごい力があります。

マリーアントワネットはカリカチュアに殺された

フランス革命も諷刺画(カリカチュア)がなければ起こらなかったといっていい。

つまりマリーアントワネットの正式肖像画は↓ですが

マリーアントワネット 肖像
さすがに当時のファッションリーダーマリーアントワネット キレイでオシャレですね。

私も↑描かれるならこう描かれたいものです。

しかし、カリカチュア(諷刺画)となるとこうなっちゃうわけです↓まあちょっとクリックしてみて。。。上の絶世の美女が…。

マリー・アントワネット 風刺画

ひ、ひどい…

顔の下が妖怪みたいだったり。。。でもこういうのが印刷されて民衆に出回ることで人々が溜飲をおろして「やったれ!やったれ!」って意識になり革命が起こった。当時の多くの人は字が読めませんから、似顔絵で嫌いな人を大笑いするのです。

だから正統派肖像画は注文者を満足させることができますが、カリカチュアは歴史を変えることもできる。

マリーアントワネット⑦ 「首飾り事件」~評判を落とし、革命の導火線ともなった有名な事件の内容の詳細。問題のネックレスの価格や価値、デザイン性についても画像満載で検証します。

日本の版画技術が浮世絵という似顔絵をうんだ

浮世絵というのは知られているとおり、日本独自の印刷(版画)ですが、元禄文化で花開いたまさに日本特有の絵画文化です。

西洋と同じくメディア(印刷媒体)によって発達しました。

この場合は、諷刺、悪口ではなく、人気のある役者の顔を大量印刷して売ったんです。つまりはブロマイド。民衆が楽しむものでした。

一度は見たい「浮世絵」名作100選

浮世絵を通し、日本特有の誇張表現や美学でフォルムやディティールが発達しました。今当たり前のように甘受している漫画。それもこうした日本独自の流れをくんでます。

鳥獣戯画 BAG BOOK textile design by SOU・SOU (バラエティ)
日本特有のカリカチュアの源流を鳥羽僧正の鳥獣戯画に見ることができる。

鳥獣戯画は日本最初の漫画と言われてます。内容は当時の権力者を諷刺するものだった。まさにカリカチュア。

日本は美術館の代わりに違うメディアが発展した

実は明治になるまで、日本には「美術館」というものはなかったんです。

西洋には絵を飾る館があって立派なものらしい、と明治政府が真似て官製で作ったのが美術館です。

元々の西洋の美術館のなりたちは、貴族が自分の気に入った絵を飾って楽しむ館を作ったことから発展しました。(ヌードも多かったので、つまりは貴族の個人的に楽しむグラビアランドといっていい。つまり、むふふの館ですな(笑))

だから今でも欧米とは美術館に対する考え方や感覚が違う。日本人にとって美術館はお上の公的機関としての意味あいが強く、ギャラリー文化も弱いのはそのせいです。美術館は立派なで役所みたいなもの!という敷居の高さがあります。働いている人も公務員的な感じになりがちです。美術館というメディアの歴史が浅いんです。

日本にはそういう壁に肖像画をズラリと掛けて楽しむ文化がなかった。

その代わり、浮世絵があった。

日本人にはメディアとは絵巻物であり、版画であり、掛け軸。そしてポルノグラフィは春画であった。

ある意味西洋よりも高度に別方向でメディアが発達し、民衆に絵と漫画や諷刺がいきわたってたんです。こういう歴史を考えると日本が美術館よりも漫画やアニメ文化が人気がありお金が流れ、発展するのが分かります。

だから今でも美術館やギャラリーに展示されているリアルな肖像画ってイマイチな感じがするのはしょうがないです。美術館という箱もののために、西洋の古典派を学んで一生懸命、明治人が描いた画風なんですから。

▼でも麗子はイケてる!?

岸田劉生「麗子像」大型セパレート形図版 (日本の名画 洋画100選)

世界大音楽家肖像画集 増補版

▲日本人に一番なじみのある肖像画?!音楽室のベートヴェンやバッハ

リアルな肖像画って偉人のための「ご立派」な文化になっちゃってる。金持ちのための絵だよね~って感じになってしまう。

似顔絵師の絵も、リアルな肖像画よりもアニメタッチやカリカチュアに人気が集まるのもより大衆的な側面があるからです。(もちろん価格や描く時間の短さやパフォーマンス的な要因もある)

浮世絵の役者絵は日本独自の似顔絵

浮世絵の役者絵は不思議ですよね。

東洲斎写楽: 役者絵85図+プチ解説 (日本の名画シリーズ)

眼を寄せて睨んでいるのが当時かっこよかった。このポーズや角度や藪にらみ。日本独自のデフォルメです。

現在相国寺で行われている「浮世絵最強列伝―江戸の名品勢ぞろい―」の宣伝文句がこれまたカッコいい。

サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展

最強のイケメン揃い踏み!

ですよ。これは観に行くしかありません。実にカッコいいではありませんか。

さいきん浮世絵風の似顔絵を描く絵師さんがおられることを知りました。京都で活動されているようです。めっちゃカッコいい絵ばっかりなので、一度描いていただきたいと目論んでおります。

浮世似顔絵

アメリカ風のカリカチュアも驚きがあっていいですが、日本風にやっちゃったらどうなるだろう、と考えていたときに、検索して拝見したんですね。デザイン性も優れていてすごい。これぞ日本の似顔絵!じゃないでしょうかね。

浮世絵には日本ならではの似顔絵文化が満載です。

「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展